漆カブレ
カブレのメカニズム
漆カブレは、接触性皮膚炎です。
漆に含まれる「ウルシオール」という物質が刺激物となって皮膚に炎症を引き起こします。
ウルシオールは水には溶けませんが、アルコールやエステルによく溶ける脂溶性物質ですので細胞膜を通過することが出来ます。
一旦T細胞に感作が起きると、再びウルシオールに接触した場合、過敏性反応を生じます。
カブレが発症する時間は?
通常1、2日たって起きる遅延型と言われますので、触れた直後に症状がなくても注意が必要です。
カブレ体質は治らないのか?
不思議なことですが、1,2度カブレた後、平気になる人もいます。また、漆工房で育った子供にカブレない人が多いことも知られています。
ですが、個人差が大きいので一般化出来る結論はありません。
どのような場合に起こるか
ウルシ科植物によるカブレ
漆カブレと言いますと、漆液や漆器に触れておきるというイメージがあります。しかし、実は最も多い原因は、山道のハイキングなどでヤマウルシ、ツタウルシなどに無意識に触ってしまった場合なのです。
ウルシ科植物全般が、程度差はありますがウルシオールを含んでいるため、カブレをおこす原因となります。ヤマウルシ、ツタウルシ、ハゼ、ヌルデなどが該当します。
特にツタウルシは紅葉が美しいですが、激しいカブレを引き起こしますので触れないようにご注意ください。
漆液によるカブレ
工房の見学などで、稀におきることがあります。特に塗師さんの工房では塗り部屋の外でも微量の漆が付いたりすることもあり,知らずに触れてカブレた例があります。
蒔絵師さんの工房では、そもそも扱う漆の量が少量なので、見学程度でカブレることはまずありません。
漆器製品によるカブレ
完全に乾燥した漆塗でカブレることはありません。漆器店でのお買い物やご家庭での漆器の御使用でカブレを生じることは通常はございませんのでご安心ください。
但し、めったに無いことですが、過敏な方が出来立ての製品に触れてカブレた例が過去にあるにはあります。塗った漆は通常約2日間ほどで一応固まりますが、完全に硬化するまでには(約35日程度)微かにウルシオールが出ているからだと考えられます。
塗上り製品は、検品作業を経て一旦蔵に保管されますので、通常、ある程度日数を経た状態でお手元に渡りますが、ご心配な場合にお尋ねください。
体調とカブレ
普段はカブレない人でも、体調によってカブレを起こすことがあるようです。
二日酔いなどや、消化器系の不調時にはカブレを起こしやすいといわれています。
気候によっても違いがあり、梅雨時のような高温多湿の状態では、皮膚のバリア機能が低下してカブレを起こしやすくなります。
漆液に触れてしまったら (漆工関連の場合)
(1)不用意に顔などを触らないこと
漆液に触れてしまった時には、その手で顔などを触らないことが大事です。カブレを広げないためです。
(2)出来るだけ早く洗う
手許にあれば、不乾性油(菜種油、ゴマ油、オリーブオイルなど)で落とします。その後石鹸で良く洗います。
油が無い場合には、石鹸で入念に洗うだけでも、カブレの症状が出るリスクは軽減できます。
(3)カブレの症状が出てしまったら
速やかに皮膚科を受診してください。適切な投薬で治療が可能です。
伝承の民間療法もありますが、現在では有効は医薬品がありますので、症状が増悪する前の受診がベストです。
ウルシ科植物に触れてしまったら (野外活動の場合)
国土交通省「公園管理者のための生物被害対処ガイド」をご参照ください。